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「守り」の経営

2022.7.8

浜口 隆則著 かんき出版

 経産省や国税庁のデータによれば毎年約9万4千社が廃業し、さらに、生き残った会社

の中で、赤 字の会社は72.8%。総合して考えると日本全体の約87%が事業経営に失敗しているという事実があるそうです。そしてその原因は「経営者が経営を知らないが故に守りを疎かにしていることにある」と著者は指摘しています。

 “(経営において)攻めは、わかりやすいのです。また、経営全体を知らなくてもできます。それは一時的な成功や偶然の成功が生まれてしまう原因に

もなっています。

 一方で、守りは分散的です。だから、わかりにくいです。「どこに穴が開くか?」という可能性を想定しないといけないわけですから。経営全体の要素と構造を知っていないとできません。そうやって考えると、守りができる会社のほうが知性的でありインテリジェンスは高いのです。”

 会社を長く継続するためには「守り」の視点が必要ですが、多くの経営者にはそれが不足しています。そこで本書は「守り」という観点から会社を見直し、「守り」を強化していく具体的な方法を提示することを目的としています。著者は会計事務所、経営コンサルティング会社を経て、現在は複数の会社を所有するビジネスオーナーです。

 グローバル化によって激しい変化が不連続に襲ってくる現代において経営の第一目的は生き残ること。そう考えれば、経営は「攻め」を基本にしてはいけない、という著者の考え方は非常に説得力があります。

 攻めにおいては一点突破が可能ですが、守りは会社全体を見なければならず分散的にならざるを得ません。それでも集約していくと大きな方向性が見えてきます。本書ではそれを守りの3大分野(①備蓄する、②分散する、③流動性を高める)と整理し、その必要性についてわかりやすいロジックで説明してくれます。

 “(営業利益率)10%程度が安定的に出ていれば、5年に1回は訪れる可能性のある大きな変化を乗り越えられるだけの備蓄を持つことができます。税引後の6%の資金を4年間、油断せずに備蓄すると6%×4年分で売上高の24%の現預金残高を積み上げることができていますから、ギリギリで乗り越えて生き残ることができます。”

 会社の守備力を上げていくためには経営者の思考をPL(損益計算書)からBS(貸借対照表)にシフトすることも重要です。

 “BSは自社の歴史の積み上げであり、過去からすべての期間の通信簿のようなものです。PLは、たまたま偶然、良い年があったりします。しかし、BSは誤魔化しようがないのです。偶然で良い状態にすることは不可能です。”

 そしてBS思考へシフトすることは、自社の資産効率を真剣に考えていくことにもつながります。

 “会社が持っている全資産を自分が投資した場合に「どのくらいのリターンを期待するのか?」を考えていくと、自社が目指すべきROAを理解しやすくなります。(中略)そう考えていくと「リスクに見合うリターン」が必要だということが実感できます。”

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