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ニュータイプの時代
2021.7.20
ニュータイプの時代 山口 周著 ダイヤモンド社
AIやビッグデータ、IoTといった⾔葉が表すように現代はさまざまなテクノロジーが急速に進化を遂げています。 ⼀⽅で、地球温暖化によって引き起こされる⼲ばつやサイクロン、⼤規模な⼭⽕事といった異常気象の影響は年々⼤きくなり、直近ではコロナウイ
ルスが猛威を振るっています。
劇的なスピードで⼤きな変化が起こり、将来の予測が極めて困難な世界情勢をいま、世界では「VUCA」と表現します。V=Volatile(不安定)、U=Uncertain(不確実)、C=Complex(複雑)、A=Ambiguous(曖昧)という、今⽇の社会を特徴づける4つの形容詞の頭⽂字を合わせた⾔葉で、もともとはアメリカ陸軍が現在の世界情勢を説明するために⽤いだした⽤語です。これら4つの特徴が取り囲むいまの世界は、私たちがこれまで「良い」と考えてきたさまざまな能⼒やモノゴトの価値に⼤きな疑問を突き付けています。
例えば「経験が豊富である」という要件は、⼈⽣において直⾯する⾊々な場⾯で、他者よりモノゴトを上⼿くこなす際の⼀種のアドバンテージとしてポジティブに評価されるものでした。ところが環境がめまぐるしく変化する「VUCAの時代」においては、過去に蓄積した経験がどんどん無価値になっていくということを意味します。このような世界にあっては、過去に蓄積した経験に依存し続けようとする⼈は早急に⼈材価値を減損させる⼀⽅で、新しい環境から柔軟に学び続ける⼈が価値を⽣み出すことになります。
社会がより「不安定」で「不確実」になれば、計画に時間をかけ、⽴てた計画を実直に実⾏するという⾏動様式は極めてリスクが⼤きいと⾔わざるを得ません。むしろ、とりあえず試し、結果を⾒ながら微修正を繰り返していくという、いわば「計画的な⾏き当たりばったり」とでもいうべき⾏動によって、変化する環境に対して柔軟に適応していくことが求められます。
また、環境が連続的に変化し続けているわけですから、どこかの時点での環境に⾼度に最適化してしまえば、それは次の瞬間には時代遅れなものになってしまうことを意味します。このような時代であれば、環境への最適化の度合いはどうでもよくなり、むしろ変化していく環境に対して、どれだけしなやかに適合できるかという「柔軟性の度合い」の⽅が重要になってきます。
“20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて⾼く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感が強い、いわゆる「優秀な⼈材」は、今後「オールドタイプ」として急速に価値を失っていくことになるでしょう。⼀⽅、このようなオールドタイプに対置される、⾃由で、直感的で、わがままで、好奇⼼の強い⼈材=「ニュータイプ」が今後は⼤きな価値を⽣
み出し、評価され、本質的な意味での「豊かな⼈⽣」を贈ることになるでしょう。”
VUCAの時代にあって、これまで望ましいと考えられてきた⼈材要件は過去のものとなりつつあります。いまそれにとって代わる新しい⼈材要件が求められています。
“私たちは明治維新以来、常に「⽬指すべき⽬標」が明確に⺬され、それを⽬指して努⼒すればいい、という状況にありました。国政や軍事については主にドイツやフランスが、企業経営については主にアメリカやイギリスがお⼿本となり、それらお⼿本と私たちとを⾒⽐べ、⽬⽴つ差分を埋め合わせていく、ということをやっていればよかったわけです。”
まさにオールドタイプからニュータイプへのシフト、その⼿掛かりが本書に書かれています。