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ライフシフト 100年時代の人生戦略

2022.3.9

ライフシフト リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著 東洋経済新報社

 『人生100年時代』という言葉がメディアで取り上げられるようになってしばらく経ちますが、その出典となったのがこの本書。「2007年生まれの子どもの半数が107歳まで生きうる」「現在50歳未満の日本人は100歳以上まで生きる可能性が高い」というデータを本書は示しています。

 100歳まで生きるとなれば、どのようなことが起きるでしょうか。仮に現行の制度に従って60歳で定年を迎えると、残り40年もの間貯蓄だけで過ごさねばなりません。年金制度がこれまで通り続くかどうかも不透明な状況で、この話を聞くと不安になる方も多いでしょう。本書ではこの100年ライフをポジティブに乗り切るために大きく分けて2つの提案をしています。

①3ステージの人生からマルチステージへの移行

 これまで日本では「いい学校を出ていい企業に就職し、定年後は悠々自適に暮らす」ことこそ理想の人生設計とされてきました。本書ではこれを、「教育→仕事→引退」の3ステージとしています。

 しかし、今より20年近く寿命が延びた人生100年時代では、70代・80代が当たり前のように働かなくてはいけない世界がやってきます。加えてAIやIT技術の進歩により、これまでの労働市場は一新されるでしょう。既存の職種がこうした技術によって淘汰されていく一方、新たなニーズ、新たな雇用が生み出されることが予想されます。

 こうした社会を生き抜くために著者が提案するのが「マルチステージ」での人生設計です。マルチステージの人生設計では、これまで決まっていた3ステージの順番にとらわれることはありません。一つのキャリアに縛られることなく、柔軟性とスピード感を持って人生を設計することを目指します。例えば、ある程度のキャリアを積んだ人が再び大学に戻って学ぶ、年齢にとらわれず仕事から仕事へ移行することでキャリアアップするなど、人生におけるステージの選択順序が多様化するのです。

②「無形資産」と「有形資産」のバランスをとる

 著者は、100年ライフを充実させるためには「無形資産」の構築にも力を注ぐべきだと語っています。「無形資産」とは、お金には換えられない次の3種類の資産です。

  • 生産性資産:お金を得るための力。主に仕事に関わる知識や技能のこと。
  • 活力資産:自身の健康、家族や友人との良好な人間関係のこと。
  • 変身資産:環境の変化に柔軟に向き合い、自分を変えていく力のこと。

 これらは長寿化した人生に不可欠な要素であるだけでなく、金銭的な資産である「有形資産」を形成する上でも大きな強みとなってくれます。

 “寿命が延びれば、働く期間が長くなり、貯蓄の重要性も高まる。長い人生の間には、産業や雇用のあり方も大きく変わる。ひとことで言えば、100年ライフがもたらすのはこういう未来だ。

 新たな価値観を持って100年ライフと向き合うために、ぜひご一読いただきたい一冊です。

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