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今すぐ金を買いなさい

金をめぐる議論は「宝飾品」「投資対象」「安全資産」など多岐にわたりますが、本書の特色は「金は貨幣である」という認識を強調している点にあります。公式の金本位制がない今でも、私的な金本位制の構築こそ資産防衛の鍵だというのです。ドル基軸の国際通貨体制が揺らぎつつある状況下、実物の金を持つことがいざというときの備えになる、と著者は説きます。
本書では金を「インフレ・デフレどちらでも機能する保険」と位置づけています。ETFのような“紙の金”ではなく、手元にある実物の金こそ最終的に頼れる存在だというわけです。著者はドルと金の逆相関にも触れ、ポートフォリオ全体の10%ほどを金に振り向ければ、急変動時のバランスを取りやすいと述べます。とりわけ印象的なのが、
“投資家に対するわたしのアドバイスは、「金を買いなさい。ただし、たくさん買いすぎてはいけません」だ。”
という一節。長期保有策として金の価値を認識すべきだというメッセージが伝わります。
本書ではドルや通貨制度への不安も率直に語られますが、すべてを悲観するのではなく、あくまで保険の一部として金を組み入れる思考を学ぶ好著。資産形成の多様な選択肢を探るうえで、金の持つ“タフな保険”の特性に触れたい方におすすめです。ぜひご一読ください。