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敗者のゲーム

2021.3.19

「敗者のゲーム」 チャールズ・エリス著 日本経済新聞出版

 敗者のゲームとは⼀体どう意味でしょうか。本書において投資運⽤について説明するのにテニスのゲームが例えとして登場します。テニスには⼆種類のゲームがあり、⼀つはプロのゲームであり、もう⼀つはその他⼤多数のゲームです。どちらのゲームでも、プレーヤーは同じ道具、服装、ルール、得点計算⽅法、そして同じ作法と慣習に従います。しかし⼆つはまったく異質のゲーム。プロのゲームでは⻑いラリーの末、強⼒で正確なショットを放ち勝利を掴みます。つまり、勝者の⾏動によって最終結果が決まります。対してアマチュアのゲームでは、これとはまったく異なります。ボールはしばしばネットにかかり、ラインの外に出る。アマチュア・プレーヤーは敵をやっつけることなどめったにできず、いつも墓⽳を掘って終わる。得点のほとんどが相⼿のミスによるもの。だとすれば、私たちアマチュアはミラクル・ショットを決めようとするのではなく、とにかくミスの少ない、確実なテニスを⽬指すべきです。⼆つのゲームは基本的に正反対。プロのテニスは勝つために⾏ったプレーで結果が決まる「勝者のゲーム」であるのに対し、アマチュアのテニスは敗者がミスを重ねることによって決まる「敗者のゲーム」です。株式市場の9割をプロである機関投資家が占めている現状で、資産運⽤で勝ち残る秘訣は失点をできるだけ少なくする、つまり「敗者のゲーム」をプレーすることであると著者のチャールズ・エリス氏は⾔います。

 “運⽤機関が市場に勝てないのであれば、市場を忠実に反映する、つまり市場に負けないインデックス・ファンドへの投資を考えてみるべきだ。インデックス・ファンドは、⾯⽩くもおかしくもないが、とにかく結果が出る。運⽤成果を測定している会社のデータによれば、インデックス・ファンドは、⻑期的にはほとんどのポートフォリオ・マネージャーを打ち負かしていると⾔える。”

 インデックス・ファンドで⻑期積⽴て。本書に書かれているのはこの基本についてです。資産運⽤を少しでも勉強したことがある⽅なら少々退屈に聞こえるかもしれません。しかし本書は初版から35年以上経った今でもたくさんの投資家に読まれている名著です。下⼿なハウツー本を何冊も読むより、この本⼀冊で⼗分ではないかと思います。

 “投資に成功するということは、値上がり株を⾒つけることでも、ベンチマーク以上の成績をあげることでもない。⾃ら取りうるリスクの限界の範囲内で、投資⽬的達成のため、市場の現実に即した⻑期的な投資計画、特に資産配分⽅針を策定し、市場の変動に左右されず、強い⾃⼰規律の下で、その⽅針を守ってゆく、ということだ。そうすれば、⻑期的な経済成⻑に⾒合う各資産の⻑期リターンを獲得することができる”

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