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人口減少社会のデザイン

2021.1.17

「人口減少社会のデザイン」 広井 良典著 東洋経済新報社

 ⼈⼝や経済がひたすら拡⼤、成⻑を続けた昭和の時代から、初めて⼈⼝減少に転じた2005年、平成を転機として、⼈⼝減少が本格化するのが令和の時代です。今まで私たちが経験したことのない事態であり、タイトルである「⼈⼝減少社会のデザイン」というのは令和の、これからの⽇本社会の最⼤のテーマであると著者はいいます。

 “昭和が⼈⼝増加とともに「限りない拡⼤・成⻑」を志向した時代であり、平成がバブル崩壊や⼈⼝減少社会への移⾏を含めてそこからの変容の時代だったとすれば「令和」は本格化する⼈⼝減少に向かいつつ、そこに様々なポジティブな可能性を拓き、成熟社会の真の豊かさを実現していく時代としてとらえるべきではないだろうか。”

⽇本の総⼈⼝の⻑期的トレンドを⾒たとき、⼈⼝の急激な増加を登り坂と捉えれば、いま私たちが⽴っているのはまさにジェットコースターが落下しようとする位置。暗く、重くなりがちな⼈⼝減少社会というテーマではありますが、発想や対応を転換して新たなスタンスで臨んでいけば、むしろ様々なプラスの可能性も開けてくる。その転換を図るための10の論点と提⾔が主な内容となっています。

 本書では⽇本の⼈⼝減少社会におけるコミュニティや都市・地域のありようについて考察していきますが、⼈類史や近代における資本主義の展開といった枠組みにまで時間軸を⼤きく伸ばし、ポスト成⻑社会がもつ意味をとらえ返すことによって、読者により広い視座を与えてくれます。

 私たち⽇本⼈は⾼度成⻑期の“成功体験”により形成された「すべての問題は経済成⻑が解決してくれる」という意識がなお強く、これらの結果として格差や環境の両者においてパフォーマンスが悪くなっている現状があると著者は分析しています。

 また、国際的に⾒ればイギリスのEU離脱をめぐる動きやいわゆるトランプ現象を捉え、現在の世界を「グローバル化の限界」が様々に⾒え始めている状況であり、その先には⼤きく異なる⼆つの姿があると考えています。

 ⼀つはトランプ現象に代表される強い「拡⼤・成⻑」志向や利潤極⼤化、そして排外主義とセットになったナショナリズム的な⽅向。もう⼀つは、ローカルな経済循環やコミュニティから出発し、それをナショナル、グローバルへと積み上げながら「持続可能な福祉社会」と呼びうる姿を志向する⽅向です。

 私たち⽇本⼈はどちらの道を選ぶべきか。著者はナショナリズムとは反対のベクトル、すなわち 「持続可能な福祉社会」の実現こそが私たちの住む⽇本が進むべき道ではないかと主張します。

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