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暗号資産と米国債の意外な接点 ~静かに進む金融の構造変化~

皆様の中にも、ビットコインなどの暗号資産の値動きが気になっている方がいらっしゃるかもしれません。ただ、これまで暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象となり、最高税率約55%という重い負担が課されていました。この状況に、大きな転換点が訪れようとしています。

税負担が最大55%から約20%へ

2025年12月に公表された2026年度税制改正大綱で、暗号資産の課税方式を見直す方針が明記されました。改正後は、株式や投資信託と同様に申告分離課税(約20.315%)へ移行し、損失の3年間繰越控除も導入される見通しです。

開業医の先生方にとって、税負担の軽減は手取り収入の増加に直結します。暗号資産が「金融商品」として正式に位置づけられる転換点といえるでしょう。施行は金融商品取引法の改正を経て、2028年頃と見込まれています。

ステーブルコインがもたらす新しい需要

この税制改正と並行して注目したいのが「ステーブルコイン」の動きです。ステーブルコインとは、米ドルなどの法定通貨と1対1で価値が連動するよう設計されたデジタル通貨で、ビットコインのような激しい変動がなく、決済や送金の手段として実用性が高い点が特徴です。

2025年7月、米国ではステーブルコインの規制法(GENIUS法)がトランプ大統領の署名で成立しました。この法律のポイントは、発行者に対して発行額と同額の米ドルや短期米国債を裏付け資産として保有することを義務づけた点です。つまり、ステーブルコインが発行されるたびに、その裏側で同額の米国債が購入される仕組みとなっています。

ステーブルコインが米国債を支える構造

現在、ステーブルコインの時価総額は約3,000億ドル(約45兆円)に達しています。今後、決済手段としての利用が広がれば、この規模はさらに拡大し、数年内に2兆ドル規模に達するとの見方もあります。

ステーブルコインが増えれば増えるほど、その裏付けとして米国債が買われる。つまり、世界中の個人や企業がステーブルコインを保有することは、間接的に米国債を保有することと同じ意味を持ちます。各国の中央銀行がドル離れを模索する動きもある中で、ステーブルコインを通じた民間からの米国債需要は、それを補完する新たな構造的要因として注目されています。

広がる企業参入と日本の動き

ウォルマートやアマゾンなどの小売大手、さらにJPモルガンなどの大手銀行もステーブルコインの発行を検討しています。暗号資産は「怪しい投資対象」から、金融インフラの一部へと急速に位置づけを変えつつあります。

こうした流れは海の向こうだけの話ではありません。日本でも資金決済法の改正によりステーブルコインの法的な定義が整備されており、金融庁は暗号資産を金融商品取引法の対象とする方針を固めています。先ほどの税制改正もこの法整備と連動したものです。国内でもステーブルコインの発行に向けた準備が進んでいます。こうした制度変化は資産形成の選択肢を広げる一つの兆しといえるでしょう。

変化を「知っておく」ことの価値

もちろん、暗号資産への投資を今すぐお勧めするものではありません。税制改正の詳細はまだ確定しておらず、ステーブルコインにもリスクや課題は残されています。

しかし、こうした制度や市場構造の変化を理解しておくことは、長期的な資産配分を考えるうえで重要です。米国債券の魅力は、ステーブルコインの普及という新たな需要構造からも裏付けられつつあります。金融の世界では、一見無関係に見える動きが思わぬところでつながっています。その構造をいち早く知っておくことが、これからの資産形成において大きなアドバンテージになるはずです。

変動の大きい時代だからこそ、こうした新しいトレンドを冷静に観察し、ご自身のポートフォリオ全体のバランスを定期的に見直す習慣が、長期的な安心につながります。ご自身の資産構成に債券をどの程度組み込んでいるか、改めて振り返ってみる良い機会ではないでしょうか。

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