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確率思考の戦略論 森岡 毅・今西 聖貴 著

USJをV字回復させたマーケターとして知られる森岡毅氏が、マーケティングを「科学」として体系化した一冊です。著者が一貫して主張するのは、「戦略とは確率を上げることだ」というシンプルな命題です。
本書を貫く概念が『プレファレンス』です。消費者がそのブランドを選ぶ確率——つまり「相対的な好意度」——を高めることが、マーケティング戦略の最重要課題だという考え方です。売上を決める変数は「プレファレンス・認知・配荷」の3つに集約されますが、その中でプレファレンスだけが無限に伸ばせる変数であり、ブランドエクイティ・価格・製品パフォーマンスの3要素によって構成されます。
読んでいて印象的なのは、著者が感情論を徹底的に排除している点です。「なんとなく良さそう」「経験上こうだろう」という判断を捨て、データと数式で確率を計算し、コントロールできる要因とできない要因を明確に分ける。その上で、コントロールできる要因に経営資源を集中させる——この思考の切れ味が本書の最大の魅力です。
「誰がお客さんなのか」を定義することから戦略は始まる、という著者のメッセージは、業種を問わず刺さります。院長先生の医院経営においても、患者層の定義、診療の強みの設計、スタッフへの伝え方——すべては「誰に・何を・どう届けるか」という確率の問題として捉え直すことができます。
感情や直感ではなく、構造と確率で考える。その発想の転換が、経営の見え方を変えてくれる一冊です。
