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GDP<小さくて大きな数字>の歴史

2021.4.18

GDP<小さくて大きな数字>の歴史 ダイアン・コイル著 みすず書房

 GDPは私たちにとって最も馴染みのある統計です。GDPがプラスに成⻑すれば、あたかも国が豊かになったかのように捉えられます。しかし、⼀国の経済規模が拡⼤することと、私たちの⽣活が豊かになることははたしてイコールなのでしょうか。

 近年のテクノロジーの⾶躍的進歩は先進諸国の経済を⼤きく成⻑させてきた⼀⽅で、⾏き過ぎた効率化は経済的格差や政治的分断を⽣み、私たちの住む資本主義社会の限界も⾒え始めているように思えます。

 このような中、「ウェルビーイング」という概念がいま注⽬されており、社会の幸福度を測定しようとする試みが世界中で⾏われています。便利さと豊かさが必ずしも⽐例しなくなった世の中において、なんとかして分断を乗り越えて豊かに⽣きようとする⼀種のムーブメントといえます。

 このムーブメントは、2009年に公表された「スティグリッツ報告書」に端を発しますが、その背景にあるのが、「GDPに代表される現在の統計では経済社会の実態がうまく捉えられていない」という問題意識でした。

 ─では、GDPとは⼀体何なのでしょうか。

 “GDPは最近はやりの「幸福度」のような指標よりは確実に役に⽴つ。ただしGDPだけで景気が測れるかというと、そうではないと私は考えている。”

 “私は、GDPを今すぐ投げ出すべきではないという結論を示そうと思う。ただし、GDPという指標が時代に合わなくなっているのも事実だ。ダラス連銀レポートにもこう述べられている。「GDPは⼤量⽣産に合わせてつくられた統計である。そのやり⽅は単純に、数を数えるというもの。何個つくられたかがすべてであり、形のない価値は測れないのだ。……変化はスパイスというように、何ごとも量がすべてではない」。経済のあり⽅が変化している以上、それを測るやり⽅も変わらざるをえない。”

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