© SCARABE CONSULTING, INC.

TOPICSトピックス

1月の市場急変を読み解く ~短期変動と長期視点~

 2026年1月、金融市場は記録的な変動に見舞われました。金価格は史上最高値を更新した翌日に急落し、円相場は米当局のレートチェックで数日のうちに6円も動き、日本の長期金利は27年ぶりの高水準に達しました。これらの出来事は、市場の予測の難しさと、資産形成において本当に大切にすべきことを改めて示しています。

 

金価格:1日で11%の急落

 1月29日、金の国際価格は1トロイオンス5500ドルを突破し、史上最高値を更新しました。国内価格も1グラム3万円の大台を突破。米国の政策への不透明感や地政学リスクの高まりを背景に、安全資産としての金に資金が殺到しました。

 

 ところが翌30日、金価格は一時5100ドル台まで急落。わずか1日で11%も下落しました。銀にいたっては31%の暴落となり、1980年代以来の下落率を記録しました。前日に発表された米国企業の巨額AI投資への懸念や、次期FRB議長人事の発表などが重なり、年初から3割も上昇していた相場が一気に調整されたのです。

 

 金は配当も利息も生まない資産ですが、通貨や政治への不安が高まる局面では存在感が増します。短期的には投機的な動きに左右されますが、インフレ・通貨不安・地政学リスクといった長期的な需要要因は依然として健在です。

 

円相場:異例のレートチェック

 1月23日の日銀金融政策決定会合後、円相場は一時1ドル159円台まで下落しました。ところが27日、米金融当局が「レートチェック」と呼ばれる為替水準の確認を行ったことが明らかになり、円は153円台前半まで急伸。数日で約6円の円高となりました。

 

 レートチェックは通常、為替介入の前段階として実施される手続きです。日本の円安懸念と、米国の金利上昇波及への警戒という両国の利害が一致したことで、異例の措置が取られました。

 

 しかし、デジタルサービス赤字の拡大、NISA資金の海外流出、日本経済の成長力低下といった構造的な円売り要因は、こうした短期的な措置では解消されません。

 

長期金利:27年ぶりの水準が示すもの

 1月19日、日本の10年国債利回りは2.275%と、1999年2月以来27年ぶりの高水準を記録しました。

 

 背景には日銀の金融政策正常化があります。2025年に2回の利上げを実施し、政策金利は0.75%となりました。加えて、消費税減税の議論から財政悪化への警戒感が強まりました。

 

 これは「金利のある世界」への移行を意味します。長く続いた異次元緩和が終わり、金利が経済実態を反映する正常な状態に戻りつつあるのです。企業の資金調達コストが上がり、住宅ローン金利も上昇していく。私たちの生活に直接影響を及ぼす大きな転換点といえます。

 

変動の背後にある不変の構造

 1月の市場が示したのは、短期的な価格変動を予測することの困難さです。金価格も円相場も、短期間で大きく変動しました。プロの投資家でも、このような動きを正確に予測することはできません。

 

 しかし重要なのは、背景にある構造的な変化は何も解消されていないという事実です。地政学リスクは高く、インフレ圧力は続き、日本では高齢化による成長制約があります。レートチェックで一時的に円高に振れても、構造は変わりません。金が急落しても、通貨への不安という長期的な需要要因は残ります。

 

 市場が私たちに教えてくれるのは、「短期的な価格変動」と「長期的な構造的トレンド」を区別することの重要性です。

 

長期視点に立った資産形成を

 市場のタイミングを計ろうとすることは、成功確率の低い試みです。「今が買い時か」「そろそろ売るべきか」という短期的な判断を繰り返しても、予想外の出来事は必ず起こります。

 

 大切なのは、資産クラスの分散(株式・債券・金など)、円建て資産への過度な集中を避けること、そして時間の分散(一度に投資せず、時期を分ける)を通じて、変動リスクを和らげることです。短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、構造的な変化を理解したうえで、長期的な視点に立った資産配分を維持していく。

 

 それが、変動の激しい時代における堅実なアプローチといえるでしょう。ご自身の資産構成を見直し、バランスの取れた配分を考える良い機会ではないでしょうか。

一覧に戻る