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アフターデジタル2
2021.10.18
アフターデジタル2 藤井 保文著 日経BP
誰もがモバイル端末を持ち、人々はSNSによって、機器はIoTによって世界とつながる。すでにオフラインがなくなる環境の中で私たちは生きていて、オンラインとオフラインを分けること自体が意味をなしません。
オフラインがデジタル世界に包含される世界を著者は「アフターデジタル」と定義していますが、企業経営は今後、このアフターデジタルの世界への対応を迫られることになっていきます。
現在、多くの日本企業のアプローチは「オフラインを軸にしてオンラインを活用する」に留まっていますが、米国の一部地域や中国都市部、一部の北欧都市では、既にオンラインとオフラインの主従逆転が起きています。
本書は、中国ビジネスに詳しい著者の視点でアリババやテンセントといった先端テクノロジー企業を例にアフターデジタルという世の変化に対して、私たちが持つべき「精神」と「ケイパビリティ」(能力と方法論)を提示してくれます。
私たちの行動が次々とオンラインデータ化し、それを企業が上手く利活用できるようになれば、企業間の競争原理は、顧客接点データを使ってどのように良い体験を作り、自社サービスへのロイヤリティを高めるかというものに変わってきます。何のデータもとれない商品を作って売っているだけでは、新たな顧客行動の変化を捉えられず、競争力を生み出しません。アフターデジタル以前は商品を作るメーカー主導のヒエラルキーでしたが、アフターデジタルの世界では、顧客接点を多く持っているプラットフォームが偉くなるという逆転が起きます。
“最適なタイミング、コンテンツ、コミュニケーションを捉えて価値提供するには、ユーザーが置かれた状況(ペインポイントやなしたい自己実現)を把握してそれに対する解決策や便益を提供し、ユーザーと定常的な接点をなるべく高頻度に持つ必要があります。これは商品販売型のビジネスでは難しく、「体験提供型ビジネス」に優位性が移行していくことを示しています。”
アフターデジタル社会において成功企業が共通で持っている思考法を「OMO」(Online Merges with Offline)と言うそうです。これはユーザーにサービスを提供する際、オンラインとオフラインを分けて考えるのではなく、一連の流れとして捉えることを指します。
“これからは「製品はあくまで顧客との接点の一つ」と考え、他の接点である、アプリ、店舗、イベント、コールセンターなどと等しく扱われるようになります。ビジネスモデルは、すべての接点が1つのコンセプトでまとめ上げられ、その世界観を体現したジャーニーに顧客が乗り続け、企業は顧客に寄り添い続ける、そうした新しいバリュージャーニー型に変化します。このモデルでは、製品販売がゴールではなく、「顧客が成功すること(=自己実現を果たしたり、今より良い生活を送れたりすること)がゴールになります。”