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日本株投資のチャンス!?東京証券取引所による企業改革

 2023年3月下旬以降、日本の株式市場は欧米の株式市場と比べ、相対的に大きな上昇を見せ、6月には年初来高値となる3万3772円をつけました。株価の好調を受けて、日本は完全に潮目が変わったとの世間の声も聞かれるようになっています。

【2022年以降の日米欧株式の推移】

期間:2021年12月末~2023年7月末 当社作成 日本株式:TOPIX、米国株式:S&P500指数、欧州株式:STOXX600指数、現地通貨ベース、グラフ始点を100として指数化

 この上昇には、日本経済の堅調な成長と企業の収益向上を見込んで日本株に注目する海外投資家の資金が市場に流入していることが大きく影響しています。その背景には、春闘の成

功や金融緩和継続による安心感、インバウンド消費の回復、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の日本株追加投資など、複数の要因が考えられますが、その中でも注目度が高いのが東京証券取引所(以下、東証)による企業改革です。

 今年3月、東証は上場企業に対して「継続的にPBRが1倍を割れている企業には、改善に向けた方針や具体的な取組、その進捗状況などを開示することを2023年春より強く要請する」ことを明らかにしました。この改善要請では企業価値向上に向けた取り組みが求められ、低PBR企業に対して投資家の求めるリターンや株価に対する意識改革が必要になります。

 PBRとは株価純資産倍率のことをいい、「株価÷1株あたり純資産」で算出される株価の割安性を判断するための指標です。今回、改善要請にある「PBR1倍割れ」とは、株価がその企業の純資産よりも安いことを意味し、市場がその企業の将来の成長や収益性に対して魅力を感じていない状態と言い換えることができます。一時的な株価の下落などで、PBR

が1倍以下になる場合もありますが、日本の株式市場には慢性的にPBR1倍割れ状態に陥っている企業が多数存在しており、それが問題となっています。

 PBR改善するには、大きく2つの方法があります。一つは1株あたり純資産を減らす方法です。余剰資金を自社株買いや増配に充てることで純資産を減らす方法です。余剰資金を自社株買いや増配に充てることで純資産を減らすことが可能になります。どちらも株主への利益還元として株主から好感されるため、株価が大きく上昇する例も多くあります。

 もう一つは株価そのものを引き上げる方法です。株価を引き上げるには、利益率の改善など効率的な企業経営を通じ、成長期待を高める必要があります。人材や研究開発、設備に資金を振り向け、成長性を市場に示す取り組みが重要となります。東証は、「経営者に自社の成長性に対する市場の評価への意識を高める必要がある」と指摘していますが、これこそが東証が求める持続的な企業価値向上と株価上昇につながるポイントとなります。

 PBR1倍割れ是正をきっかけに、株主への利益還元策を通した株価上昇の効果が見込めるほか、効率的な企業経営を促すことで長期的な企業価値の向上と株価の底上げが期待されています。

 今後の株価上昇の期待から日本の株式市場には足元で約4.5兆円の海外投資家の資金が流入してきています。過去の海外投資家の売買状況をみると、2012年のアベノミクスを契機に2015年半ばまでで日本株式は20兆円超の買い越しがありました。海外投資家の買い余力はまだまだありそうです。

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