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生涯手取りを最大化する退職金戦略 ─法人を活用した効率的な老後資金準備

 医療法人を開設する大きなメリットのひとつに役員退職金制度があります。この制度を利用すれば、個人事業のままでは実現できない有利な老後資金準備が可能になります。しかし、制度があっても、それを戦略的に使いこなせなければ宝の持ち腐れです。
 今回は、重税感に悩む院長先生の「生涯手取りを最大化する」退職金戦略について、生命保険を活用した効果的な2つのアプローチをご紹介します。

 

生涯手取り最大化のための基本的な考え方

 医療法人なら、退職金受給の仕組みを早い段階で作っておくことが生涯手取りを最大化するための一番の近道となります。なぜなら、退職金には「退職所得控除」と「1/2課税」という大きな税務メリットがあり、給与受給に比べ税負担をおよそ半分に軽減できるからです。

 そして、高収入である開業医にとって、もうひとつ重要なのが「予期せぬ収入減少のリスク対策」です。病気や障害により働けなくなった場合の影響は大きいため、単なる資産形成だけでなく、包括的な保障も必要です。

 また、引退まで10年以上あれば、より積極的で有効な戦略を選択することができるため、さらに生涯手取りを増やすことにつながります。

 

生命保険を活用した効果的なアプローチ

・生前給付保険:包括的なリスク対策アプローチ
 医師の職業特性を考慮すると、就労不能リスクへの対応は極めて重要です。特に外科的な手技を行う診療科では、手指の障害が即座に収入減少に直結するリスクがあります。生前給付機能付きの保険は、三大疾病や様々な疾病・障害に対して、生前に保険金を受け取ることができます。従来の死亡保険では「万一の際の遺族保障」でしたが、生前給付保険では「自分自身のための保障」として利用できます。
 外貨建ての商品を選択すれば、円安によるインフレリスクへの対応も同時に図れます。キャッシュリッチな医療法人にとって、法人資金の一部を外貨建て資産に分散投資する効果も期待できます。
 将来は、保険解約時に戻る解約返戻金を退職金原資に充てることもできます。また、契約形態によっては損金算入による税の繰り延べ効果も期待できます。資産形成と包括的なリスク対策を両立できる、医師にとって理に適った保険といえるでしょう。

 
・変額保険:積極的な資産形成アプローチ
 株式など積極資産を取り入れられる変額保険を利用すれば、積極的な運用を通じて退職金準備をより有利に進めることができます。医療法人では株式投資などの積極運用が定款により制限されていますが、変額保険であればそれに反することなく、株式や債券を中心とした分散投資を実現できます。
 最大の魅力は、実質的に院長個人の長期資産形成を図れる点です。運用成果によっては解約返戻金が大きく増加する可能性があり、退職時のまとまった資金確保に大きく貢献します。また、万一の際は死亡保障も兼ね備えています。選択する保険種類や契約形態によっては、損金算入による税の繰り延べ効果も期待できます。
 ただし、運用成果によっては元本を下回るリスクもあるため、リスク許容度や運用期間を十分に検討した上で利用することが重要です。引退まで10年以上の期間がある場合、長期・積立・分散投資によりリスクを軽減しながら、大きく資産成長を狙うことができます。

 

「今すぐ」始める理由

 これらは、いずれも「時間を味方につける」ことで効果を最大化できます。特に運用期間が長いほど、複利や時間分散の恩恵を受けやすくなります。
 また、制度設計は個々の状況を総合的に考慮する必要があります。「資産形成を重視したい」「保障を手厚くしたい」「両方のバランスを取りたい」といったニーズに応じて、最適な組み合わせは変わってきます。
 重要なのは、「いつか考えよう」ではなく、「今から準備を始める」という行動力です。時間という最大の武器を利用できるのは、早期に準備を開始した人だけの特権です。
 退職金戦略は、医業経営者にとって避けて通れない重要なテーマです。ご自身に最適な戦略を見つけるために、まずは専門家にご相談されることをお勧めします。

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