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世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ

斎藤 ジン 著 文藝春秋

 ソロスを大儲けさせた”伝説のコンサルタント”齋藤ジン氏の初の著書。

 
 本書の核心は、東西冷戦後の世界を支配してきた「新自由主義」が終焉を迎え、新しい世界秩序への”ゲームチェンジ”が始まっているという認識にあります。経済効率重視から地政学重視の時代への転換です。

 
 著者は、日本に千載一遇のチャンスが訪れていると主張しています。「失われた30年」は雇用を守り続けた結果でしたが、労働市場が「ルイスの転換点」を超え、賃金上昇とデフレ脱却の時代が始まると分析しています。
 

 さらに重要なのは地政学的な変化です。アメリカという「カジノのオーナー」が日本経済の再生を望んでいる理由は、新たな敵である中国への対応策として「強い日本」が必要だからです。冷戦期の主戦場がヨーロッパだったのに対し、今度のメインシアターは東アジア。アメリカは強い日本なしには有効な対アジア政策を遂行できません。

 
 印象的なのは政治による経済介入が新しい国際標準となる中、日本の政財官の関係性がむしろ武器になるという視点です。世界のサプライチェーンも経済効率重視から地政学的懸念を反映したものへと変化し、新自由主義の波に乗り遅れた日本にとって「リショアリング」や「フレンド・ショアリング」は相対的にプラス要因となります。

 
 このような世界秩序の転換期を読み解く鋭い分析は、長期的な資産戦略を考える際の重要な指針となります。

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