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いくらが正解?失敗しない贈与の考え方

 「子どもたちに生前贈与をしたいが、いくらが適切なのか分からない」というご相談をよくいただきます。

 

 今回は、相続税が多額になりやすい傾向のある院長先生にとって有利になりやすい「暦年課税」制度を利用した失敗しない贈与額の見極め方についてご紹介します。

 

失敗しない贈与額を見極める

 暦年課税制度を利用した贈与では、受贈者1人につき年間110万円までの基礎控除があり、この範囲内であれば贈与税はかかりません。しかし、少額すぎると相続税の削減効果が薄く、多額すぎると贈与税が高くなってしまいます。では、いくらが適切なのでしょうか。

 

 それは、相続税の負担率と贈与税の負担率を比較するという方法です。この2つを比較して、「相続税の負担率より低い贈与税の負担率で贈与できる範囲」が、効果的な贈与額の目安となります。

 

 具体例で見てみましょう。資産が3億円で、相続人が配偶者と子2人の場合、相続税は約2,860万円、負担率は約9.5%になります(下図を参照)。つまり、贈与税の負担率が9.5%より低い範囲で贈与すれば、相続で渡すよりも税負担を抑えられるということです。

 

 では、18歳以上の子や孫に贈与する場合、どのくらいの金額が目安になるでしょうか。年間400万円を贈与した場合、贈与税は約34万円、負担率は約8.5%です。年間500万円なら贈与税は約49万円、負担率は約9.8%です。

 

 この例では、年間400万円程度の贈与なら相続税の負担率9.5%を下回るため、効果的な贈与といえます。お子さん2人に対して各400万円、合計年間800万円を10年間贈与すれば、8,000万円を相続財産から移転でき、大きな相続税削減効果が期待できます。

 

【資産額別の適切な贈与額目安表】

※相続人:配偶者+子2人、法定相続分通りに相続した場合

 

効果を最大化する3つのポイント

 生前贈与の効果をさらに高めるために、次の3つのポイントを押さえましょう。

 

基礎控除の活用: 受贈者1人につき年間110万円まで非課税で贈与できます。したがって、多くの人へ贈与することで、基礎控除を最大限活用できます。また、長期間にわたって贈与を継続すれば、非課税で移転できる財産総額を大きく増やせます。

 

世代飛ばし贈与: 子を飛び越えて相続財産を受け取らない孫などに贈与することで、2世代にわたる相続税の軽減につながります。また、暦年課税において、相続または遺贈により財産を取得しない孫等への贈与は生前贈与加算(後述)の対象となりません。

 

早期の生前贈与: 財産を相続した人が、相続開始前7年以内に贈与された財産は、基礎控除額以下であっても相続財産に加算されます(生前贈与加算)。そのためできるだけ早い段階から計画的に進めることが大切です。

 

贈与契約書の作成を

生前贈与を実行する際には、贈与契約書の作成が重要です。贈与は口約束でも成立しますが、後日、本当に贈与があったのかが問題になることが少なくありません。

 

契約書には、日付・贈与者と受贈者の氏名・贈与財産の内容・金額を明記し、双方が署名・押印します。また、財産の移転は銀行振込など証明できる方法で行い、受贈者自身が通帳やキャッシュカードを管理することが大切です。贈与者が受贈者の通帳や印鑑を管理していた場合、「名義預金」と認定され、贈与が否認される可能性があります。

 

最適な計画を立てるには

 生前贈与は、相続税対策として有効な手段ですが、適切な金額の見極めと計画的な実行が成功の鍵となります。ご自身の資産状況や家族構成に応じた最適な贈与計画については、専門家にご相談されることをお勧めします。

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