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利回りだけで選んではいけない3つの理由 〜高利回り商品に潜む、構造的なリスク〜

米国の長期金利が4%台で推移する中、米ドル建ての金融商品への関心が高まっています。米国債、社債、一時払い終身保険——いずれも4%台の利回りが取れる水準にあり、「法人資産の運用先として、どれが一番有利ですか」というご相談をいただくことが増えています。最近では、年7〜8%台といった一段高い利回りの社債が目に入ることもあります。

しかし、利回りの数字だけで判断するのは、思わぬ落とし穴があります。その理由を3つに整理してお伝えします。

高利回りには「理由」がある

高い利回りには、それに見合う理由が必ず存在します。それは、商品設計に内在する構造的なリスクです。

例えば、「年8%超」の利回りを持つ米ドル建て社債のほとんどは、永久劣後債と呼ばれる種類のものです。普通の社債と何が違うのか。3つの構造的リスクを抱えています。

ひとつ目は、償還の先送りリスクです。劣後債には「初回コール日」という、発行体が繰上償還してもよい日が設定されていますが、これはあくまで発行体の任意です。市場金利が上昇していたり、発行体の財務状況が悪化していたりすると、コールされず、保有期間が想定の何倍にも長くなることがあります。永久劣後債の場合は、最終満期そのものが存在しません。

ふたつ目は、金利変動による価格変動リスクです。残存期間が長いほどこの影響は大きく、超長期の劣後債では金利1%上昇で15〜20%以上の価格下落が目安となります。2022年の米国金利上昇局面では、超長期の劣後債で20〜30%下落した銘柄も多数ありました。

みっつ目は、流動性リスクです。劣後債は通常の社債より売買量が少なく、いざ換金したいと思っても、不利な価格でしか売れない場面があります。

利回りが目的と合うとは限らない

法人に置かれているお金には、それぞれに目的があるはずです。運転資金、中長期の運用、将来の退職金や事業承継——目的が違えば、求めるべき特性も違います。

法人資産は経営の原資です。いざというときに換金できるかどうかが、利回りの数字より優先される場面があります。

利回りの数字だけで選ぶことの危うさは、ここにあります。「どれが一番有利か」を考える前に、「これは何のための資産か」を考える必要があるのです。

医療法人には制度上の論点もある

厚生労働省の「医療法人運営管理指導要綱」では、医療法人の現金は「国公債若しくは確実な有価証券」で保管するものとされています。ここでいう「確実な有価証券」の範囲は法令上明示されておらず、実務上は所管行政庁(都道府県)の解釈に委ねられています。一般に、米ドル建て外債は慎重な判断を要するとされる例があり、永久劣後債のような商品については判断が分かれる可能性が高いと言えます。

医療法人で高利回りの社債を保有することは、商品リスクに加えて、制度上のグレーゾーンを抱えることになります。

利回り以外に見るべきもの

ここまで見てきたように、高利回り商品には構造的なリスク・目的とのミスマッチ・制度上の論点という3つの留意点があります。

では、何を見るべきか。「経営の原資」として置くお金であれば、利回りの数字よりも、流動性・出口の動かしやすさ・運用の継続性こそが優先されるべき要素です。

この視点で考えると、米ドル建ての一時払い終身保険は、医療法人の資産運用先として筋のいい選択肢になります。利回り水準は米国債と大きく変わりませんが、契約者を法人から個人に変更するだけで保険そのものを丸ごと個人に渡せる構造を持っています。書類一枚で完結し、運用も継続される。受取設計次第では、法人保有期間中の利息を運用に活かしながら、引退後は個人の継続収入として受け取ることもできます。制度面でも、保険契約は「有価証券」とは別の枠組みで扱われます。

もちろん、ご自身の出口時期や経営状況に合った設計を選ぶことが大切です。

利回りの数字を見比べる前に、「これは何のための法人資産か」を問うてみる——その答えが決まれば、何が向いていて何が向いていないかは、自ずと見えてきます。ご自身の状況に合った具体的な設計については、専門家と相談しながら進めることをお勧めします。

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