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年末、財産の棚卸しを〜家族の目線で、見直してみる〜

さて、今月は、年末年始に家族が集まる前に知っておきたい、相続の「全体像」について考えてみます。

年末年始は、離れて暮らす家族が顔をそろえる数少ない機会です。親御さんの健康や実家のこと、そしてご自身の医院のこと。その先にある相続のことが頭をよぎっても、いざ口に出すのはためらわれる。そう感じる院長先生は少なくないはずです。ただ、財産が「どこに」「何が」あるのかを一覧にして用意しておくと、話はぐっと進みやすくなります。

相続を受ける側にとっては知っておきたいこと、財産を残す側にとっては備えておきたいことです。

相続というと、まず「いくらかかるのか」「税金はどうなるのか」が思い浮かびます。もちろん大事な問題です。ただ、実際に相続を迎えたご家族が、金額を考える前の段階でつまずくこともあります。

困るのは「どこに何があるか」

相続が始まると、ご家族はまず故人の財産を洗い出すことになります。預金口座、証券口座、生命保険、不動産。亡くなった方が法人を経営していた場合は、法人との貸し借りや、出資があればその関係も確認の対象になります。

こうした財産が、どこに、どれだけあるのか。取引している金融機関はいくつあるのか。それが分からないと、財産の調査や手続きに思わぬ時間を取られることになります。

三菱UFJ銀行が公表しているデータでは、同行の遺産整理サービスを利用した方の約7割が、5社以上の金融機関と取引していたそうです。仕事を続けるなかで口座や契約が増えていくのは自然なことですが、その全体を家族が把握しているとは限りません。

しかも手続きは、金融機関ごとに個別です。書式も手順もそれぞれ異なり、戸籍謄本や印鑑証明書といった同じような書類を、一社ずつ用意して提出することになります。財産の調査から各社の手続きまで、数か月単位の時間がかかることも珍しくありません。

相続税の申告が必要な場合、その期限は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。財産の洗い出しに時間を取られるほど、遺産をどう分け、どう納税するかを考える時間は削られていきます。

困るのは、税額の計算より前の段階。「全体像が見えないこと」そのものなのです。

金融機関が動き出した理由

この負担は、金融機関の側でも課題になっています。2026年4月、大手金融機関を含む10社が、相続手続きを一元化する仕組みづくりに向けて基本合意を結びました。2026年秋に新会社を設立する予定で、2027年夏ごろに一部地域で試験導入、2028年秋ごろに全国で提供を始める計画です。

背景にあるのは、高齢化に伴って相続が毎年数百万世帯で発生しているという現実です。相続人が金融機関ごとに同じ書類を何度もそろえる負担を軽くし、人手不足のなかで手続きを効率化する。それが、彼らの解こうとしている課題です。

ただ、目を向けておくべきことがあります。それは、共通化される範囲です。共通化されるのは、主に連絡や照会、書類の提出といった「手続き」の部分だと報じられています。窓口が一つにまとまっても、故人が何をどこに持ち、誰に何を託したかったのかまでは、仕組みは教えてくれません。

財産の全体像を把握し、その意向を家族と共有しておくこと。手続きがどれだけ便利になっても、財産をどう引き継ぎたいかという本人の意向までは、仕組みだけで決めることはできません。

家族で話せる状態をつくる

では、年末に家族が集まったとき、何から始めればよいのでしょうか。いきなり「相続の話をしよう」と切り出す必要はありません。

まずは、その一覧の中身です。金額は正確でなくてもかまいません。取引している金融機関と支店、加入している保険と受取人、不動産の所在、医療法人との貸し借りや出資の関係。紙の通帳が届かないネット銀行やネット証券は、家族が存在に気づきにくいため、特に書き出しておきたいところです。

あわせて、保険金の請求先や、預金・証券の相続手続きの窓口など、財産ごとに問い合わせ先が異なるものも、一覧に添えておくと役立ちます。それだけでも、残されたご家族が手続きを進める際の助けになるはずです。

贈与の話になったときも、同じ見取り図が前提になります。全体としてどれだけの資産があり、将来どう引き継ぎたいかが見えていれば、いくらを、いつ渡すのかを落ち着いて判断できます。見取り図がないままでは、非課税枠をどう使うかという部分だけの話になりがちです。家族で話す機会があれば、枠の使い方からではなく、将来どのように財産を引き継ぎたいかから話を始められます。

そのうえで、一覧の置き場所と、大まかな意向を家族に伝えておく。親御さんに「一覧をつくってほしい」とお願いするのは、言い出しにくいものです。まずはご自身の分をつくってみてください。自分の財産を書き出す手間を先に経験しておくと、親御さんへの頼み方も変わりますし、話も切り出しやすくなります。

相続の手続きは、これから少しずつ便利になっていくでしょう。それでも、何がどこにあり、どう引き継ぎたいのかは、本人と家族にしか分からないことがあります。そうした情報や思いを共有できる状態にしておくことが、将来のご家族の負担を軽くすることにつながります。

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